寒さや結露、外からの騒音など、窓まわりの悩みは多くの家庭で共通のものです。そんなとき候補に上がるのが「内窓の設置」と「外窓交換」。どちらも断熱や防音に効果がありますが、仕組みや費用、向いている家の条件が異なります。
この記事では、内窓と外窓の違いをわかりやすく整理し、どちらを選ぶと快適な住まいになるのかを解説します。断熱性能や防音効果だけでなく、2025年の補助金制度や費用の目安にも触れながら、実際の選び方をイメージできる内容にまとめました。
これから窓のリフォームを検討している方や、今ある窓の性能を見直したい方にとって、判断の手がかりとなる基礎知識を5分で理解できるよう構成しています。まずは「内窓と外窓の違い」から順に見ていきましょう。
内窓 外窓 違いを基本からやさしく解説
まずは「内窓」と「外窓」がそれぞれどのような構造なのかを理解することが大切です。どちらも窓の断熱性や防音性を高めるための手段ですが、位置や仕組みがまったく異なります。ここでは用語の整理をしながら、基本的な考え方を順に見ていきましょう。
内窓と外窓の定義と位置関係
内窓とは、既存の窓（外窓）の内側に新しく取り付ける「もう一枚の窓」です。二重窓とも呼ばれ、室内側に設置されるため施工が簡単で、既存の外壁やサッシを壊さずに断熱性を高められるのが特徴です。
一方で外窓は、家の外壁側に設置される主たる窓のことを指します。窓枠ごと交換するリフォームを行うと、気密性・防犯性・デザインを一新できますが、工事の規模が大きく費用も高くなります。
構造の違い（サッシ・ガラス・気密の考え方）
内窓は主に樹脂サッシを使用し、既存のアルミサッシに比べて熱を伝えにくいのが特徴です。二重構造にすることで空気の層が生まれ、この空気層が断熱・防音に大きく寄与します。
外窓は、サッシとガラス自体を交換することで気密・水密性能を根本的に改善します。特に最新の外窓はLow-Eガラス（特殊金属膜で断熱性能を高めたガラス）を採用しており、冷暖房効率を大きく改善します。
用語整理：二重窓・二重サッシ・ペアガラス
似たような言葉が多いので混同しやすいですが、「二重窓」や「二重サッシ」は内窓を設けて二重構造にした状態を指します。一方の「ペアガラス」は1枚のサッシの中でガラスが二層構造になっているもので、取り付け位置は1か所です。
つまり、内窓＝二重窓、ペアガラス＝単体サッシの中の二層構造、と覚えると整理しやすいでしょう。
選択の起点：何を改善したいか（寒さ・騒音・結露）
どちらを選ぶかは、「何を改善したいか」によって変わります。例えば冬の寒さや結露が主な悩みなら内窓でも効果がありますが、サッシの劣化やデザイン刷新を重視するなら外窓交換が適しています。
目的を明確にすることで、費用対効果が高く、長く満足できるリフォームができます。
戸建てと集合住宅で違う前提条件
戸建てでは外壁工事が可能なため、外窓交換やカバー工法を選びやすい一方、集合住宅では管理規約により外窓を変更できないケースが多くあります。その場合は、内側に取り付ける内窓が実質的な選択肢になります。
また、築年数が古い集合住宅では気密性が低いことも多いため、内窓の追加で快適性を向上させる効果が大きいです。
例えば北海道などの寒冷地では、既存の外窓に内窓を追加することで室温が2〜3℃上がり、暖房費を年間1〜2万円ほど抑えられたという例もあります。
- 内窓は既存窓の内側に設置し、断熱・防音に効果的
- 外窓はサッシごと交換し、性能を根本的に改善できる
- 集合住宅では内窓が実現的な選択肢
- 目的を明確にして選ぶことが失敗を防ぐポイント
効果の実態比較：断熱・防音・結露・防犯・日射
次に、内窓と外窓が実際にどのような効果をもたらすのかを見ていきます。どちらも性能向上に役立ちますが、得意分野が異なります。断熱・防音・結露・防犯・採光といった観点から整理して比較してみましょう。
断熱性能の比較（熱貫流と体感の違い）
内窓を取り付けると、既存窓との間に空気層ができるため、熱の伝わりを防ぎます。外気の冷たさが室内に伝わりにくくなり、冬場の体感温度が2〜3℃上がるケースもあります。
一方の外窓交換では、サッシやガラスそのものの性能を高めるため、より高い断熱効果が期待できます。特に樹脂サッシ＋Low-Eペアガラス仕様なら、熱貫流率（熱の通りやすさ）はアルミ製の約3分の1にまで下がります。
防音性能の比較（音の種類と周波数別の考え方）
防音効果については、二重構造になる内窓が有利です。内窓の空気層が音の伝達を弱め、特に中高音域（車の走行音や人の声など）に効果を発揮します。
ただし、外窓交換でも防音ガラスを選べば効果が期待できます。低音域（電車の振動など）を抑えるには、ガラス厚やサッシ構造を工夫する必要があります。
結露リスクと抑え方（室内側・躯体側）
内窓は室内側のガラスが暖かく保たれるため、表面結露を防ぎやすい反面、既存の外窓の内側で結露が発生する「中間結露」に注意が必要です。換気を確保することで防止できます。
外窓交換の場合はサッシごと新しくするため、全体的な断熱性が上がり、結露の発生源を根本から減らすことができます。断熱性能を優先する場合に適しています。
防犯・操作性・採風性の違い
内窓は鍵が2つになるため防犯性が高まりますが、開閉操作が2段階になり少し手間です。外窓交換では最新仕様のロックや網戸機構が選べ、操作性が向上します。
採風性を重視する場合は、外窓交換で縦すべり出し窓や引き違い窓など、生活スタイルに合わせた窓種を選ぶことができます。
夏の日射遮蔽と西日対策の向き不向き
夏場の暑さ対策では、外側で日射を遮る外窓交換の方が有効です。Low-Eガラスの遮熱タイプは日差しを反射し、室温上昇を防ぎます。
内窓は主に冬の断熱や防音に適していますが、遮熱フィルムを併用することで一定の効果を得ることも可能です。
例えば、都市部のマンションで防音を重視する場合は内窓が効果的ですが、築30年以上の戸建てでサッシの老朽化が進んでいるなら外窓交換の方が適しています。
- 断熱性能は外窓交換が高いが、内窓でも十分改善可能
- 防音は内窓が有利で、騒音対策に効果的
- 結露の発生箇所により対策方法を変えることが重要
- 防犯・採風は外窓交換のほうが自由度が高い
- 夏の暑さ対策には遮熱ガラスなど外側の工夫が有効
費用・工期・補助金（2025年時点）の要点
窓リフォームを検討する際は、費用や工期、そして補助金制度を理解することが重要です。内窓と外窓では工事規模や材料費が異なり、選択によって総費用が大きく変わります。また、2025年の省エネ・断熱関連の補助金も活用できる場合があります。
内窓の費用と工期の目安
内窓の取り付けは比較的簡単で、1窓あたり5万〜10万円程度が相場です。工期は1日〜2日で完了するケースが多く、既存窓を撤去する必要がないため、生活への影響も少なめです。
DIYで設置する場合は材料費のみで抑えられますが、精密な施工が求められるため、サイズ誤差や気密性の不具合に注意が必要です。
外窓交換（カバー工法）の費用と工期
外窓交換はサッシごと交換する工事となるため、1窓あたり15万〜30万円程度の費用が一般的です。工期は1〜3日ほどかかります。既存枠を残して新しい枠を被せる「カバー工法」を用いれば、工事は短時間で済みますが、窓の形状によっては対応できない場合もあります。
外窓交換は断熱性や防犯性の向上効果が高く、長期的には冷暖房費の削減にもつながります。
補助金の基本枠と適用条件の違い
2025年の省エネ・断熱リフォーム補助金では、内窓設置・外窓交換ともに対象となるケースがあります。内窓は追加設置費用の一部が補助されることが多く、外窓交換は省エネ性能を証明する仕様が条件となることが一般的です。
補助金額や条件は住宅の築年数や窓の種類、設置場所によって異なるため、事前に自治体や公式サイトで確認しておくことが大切です。
家全体で見たコスパ比較の考え方
総合的なコストパフォーマンスを考える際は、施工費だけでなく、光熱費の削減や快適性の向上も含めて比較します。内窓は初期費用が安く短期間で効果が出るため、部分的な改善に向いています。外窓交換は費用が高いものの、長期的には家全体の快適性と省エネ効果が大きくなるメリットがあります。
見積もりで確認すべき明細と注意点
見積もりを確認する際は、材料費、施工費、追加部材費、既存窓撤去費などの内訳を細かくチェックしましょう。また、施工業者によって価格や工事手順が異なるため、複数社で比較することが重要です。
- 内窓：1窓5万〜10万円、工期1〜2日
- 外窓交換：1窓15万〜30万円、工期1〜3日
- 補助金は条件を確認、内窓・外窓で枠や仕様が異なる
- 光熱費削減効果も考慮してコスパを評価
- 複数業者の見積もり比較で最適な選択を
施工方法と適合条件：内窓設置／外窓交換の向き不向き
次に、実際にどのようなケースで内窓や外窓交換が向いているのかを見ていきます。家の条件や目的によって、施工方法や選択肢が変わります。
内窓が向くケース（既存枠の状態・方位・生活動線）
内窓は既存の窓枠が健全であれば、取り付けが容易です。南向きや西向きなど日射の強い窓では断熱だけでなく、遮熱フィルムとの併用も効果的です。生活動線を妨げずに施工できる点もメリットです。
外窓交換が向くケース（枠劣化・サイズ変更・機能更新）
外窓交換は、既存枠が老朽化している場合や、窓サイズの変更、新しい機能を導入したい場合に適しています。断熱性能や気密性、防犯性を根本から改善したい方に向いています。
カバー工法の仕組みと開口サイズの変化
カバー工法では既存の窓枠を残したまま、新しい枠を被せるため、開口面積がわずかに小さくなる場合があります。室内の使い勝手やカーテンとの干渉も考慮して計画することが重要です。
干渉物・額縁・カーテンレール等のチェックポイント
施工前に額縁やカーテンレール、エアコンの室内機など、窓まわりの干渉物を確認しましょう。特に内窓は既存枠の内側に取り付けるため、干渉があると開閉に支障が出る可能性があります。
築年数・断熱区画・気密との相性
築年数が古く、断熱や気密が低い住宅では、内窓の追加でも快適性が向上しますが、外窓交換の方が効果は高くなります。住まい全体の断熱区画や気密性能を考慮して、最適な方法を選びましょう。
- 内窓は既存枠が健全で施工が容易
- 外窓交換は枠の劣化やサイズ変更で有効
- カバー工法は開口サイズの変化を確認
- 干渉物を事前にチェックすることが重要
- 築年数・断熱区画・気密性能に応じて選択
ケース別の最適解：窓種・地域・住まいタイプで選ぶ
窓リフォームでは、住まいの条件によって最適な方法が変わります。窓の種類や地域、建物の構造に応じた選択を知ることで、快適性と費用対効果を両立させることができます。
掃き出し窓・腰窓・小窓での最適選択
掃き出し窓は面積が大きいため、断熱効果を高めたい場合は外窓交換が有利です。腰窓や小窓では、内窓を追加するだけでも断熱性や防音性の改善が十分に期待できます。
寒冷地／温暖地・日当たりで変わる優先度
寒冷地では冬の暖房効率を上げるため、断熱性能の高い外窓交換が優先されます。温暖地や日射の強い地域では、遮熱ガラスや内窓併用で夏の暑さ対策も含めた選択が効果的です。
集合住宅での管理規約と施工可否の判断
集合住宅では外窓の交換が規約で制限されている場合があります。その場合は内窓の設置が現実的な選択肢となり、断熱・防音効果を得ることができます。
子ども部屋・寝室・リビングの目的別最適化
生活空間ごとに最適な窓が異なります。子ども部屋や寝室は防音優先で内窓が向き、リビングは断熱・採光・景観のバランスを考え外窓交換も検討できます。
併用の考え方：内窓＋遮熱対策などの組み合わせ
既存の外窓を活かしつつ内窓を追加する併用は、コストを抑えながら断熱・防音を強化できる方法です。また、遮熱フィルムやロールスクリーンと組み合わせることで、夏場の快適性も高められます。
- 掃き出し窓は外窓交換、腰窓・小窓は内窓で十分
- 寒冷地は断熱重視、温暖地は遮熱も考慮
- 集合住宅では内窓が現実的な選択肢
- 部屋の用途に合わせて最適な窓を選ぶ
- 内窓＋遮熱対策の併用で快適性向上
二重サッシとペアガラス（Low-E含む）の違い整理
断熱・防音性能を比較する上で、二重サッシとペアガラスの違いを正しく理解することは重要です。どちらも窓の性能向上に役立ちますが、仕組みや効果が異なります。
二重サッシ（内窓）の仕組みと空気層の効果
二重サッシは既存窓の内側に追加するサッシで、間に空気層ができます。この空気層が断熱材の役割を果たし、室内の熱を逃がしにくくすると同時に、防音効果も発揮します。
ペアガラス・Low-Eの基礎とグレード差
ペアガラスは1つの窓に二枚のガラスをはめ込み、空気層を設けた構造です。Low-Eガラスはガラスに特殊金属膜を施し、熱の透過を抑え断熱性能を高めています。グレードによって性能差があるため、用途に応じて選ぶことが重要です。
結露・断熱・防音の観点での比較
二重サッシは空気層が厚いため、防音性能や結露対策に優れます。ペアガラスは断熱性能に優れますが、防音効果は二重サッシにやや劣ります。目的に応じて適切な窓を選ぶことがポイントです。
交換タイミングと将来の更新コスト
二重サッシは既存窓を活かすため、初期費用が低く交換も容易です。ペアガラスの外窓交換は高額ですが、耐用年数は長く、長期的な更新コストは抑えやすくなります。
よくある誤解と正しい選び分け
「二重サッシ＝ペアガラス」と誤解されることがありますが、構造が異なります。防音重視なら二重サッシ、断熱重視ならペアガラスやLow-Eを選ぶのが基本です。
- 二重サッシは内窓設置で空気層が防音・断熱効果を発揮
- ペアガラス・Low-Eは断熱性能に優れる
- 結露対策は二重サッシの方が有利
- 初期費用・更新コストのバランスで選ぶ
- 誤解を避け、目的に応じた選び分けが重要
失敗事例から学ぶ注意点とメンテナンス
窓リフォームでは、計画段階での見落としや施工時の不注意が後悔につながることがあります。ここでは、よくある失敗例とその防止策、メンテナンス方法について解説します。
開閉干渉・出入り動線のストレス
内窓や外窓の設置位置によっては、開閉時に家具やカーテンに干渉することがあります。特に掃き出し窓では動線を確認せず施工すると日常生活に支障が出る場合があります。
窓が小さくなる・段差が生じる問題
内窓設置やカバー工法では、窓枠の厚みや段差が生じることがあります。カーテンやブラインドとの干渉、窓周りの見た目にも影響するため、事前に寸法確認が必要です。
換気不足と結露の思わぬ落とし穴
断熱性能を高めると、換気不足により結露やカビが発生することがあります。特に内窓を設置した場合、既存窓との空気循環を意識して換気計画を立てることが重要です。
掃除・メンテの頻度と楽な設計
二重窓や複雑なサッシは掃除が面倒になりがちです。施工時に掃除しやすい設計にしておくことで、長期的な快適性を維持できます。
長期目線の費用対効果を崩す要因
初期費用が安くても、手入れや修理が多い場合、総コストは高くなることがあります。耐久性のある材料選びや保証制度の確認が大切です。
- 開閉干渉は事前の動線確認で防止
- 段差や窓サイズの変化を把握して設計
- 換気不足による結露を回避する対策を検討
- 掃除・メンテを考慮した施工設計が重要
- 耐久性や保証を確認して総コストを抑える
内窓と外窓の選び方：あなたに最適な窓は？
最後に、自宅に最適な窓を選ぶためのポイントを整理します。どちらの窓を選ぶかは、断熱・防音・結露・費用・工期・生活スタイルを総合的に判断することが大切です。
住まいの環境に合わせた工法選択
築年数や断熱性能、窓の方位や日射条件に応じて、内窓と外窓どちらが適しているかを判断します。寒冷地や老朽化が進む家では外窓交換、集合住宅や部分改善では内窓が適しています。
用途別で見る窓の選び方ガイド
寝室や子ども部屋は防音を重視して内窓、リビングや広い掃き出し窓は断熱性・採光・景観を重視して外窓を検討します。部屋ごとに最適な窓を組み合わせることも効果的です。
併用の効果とおすすめの組み合わせ
既存の外窓を活かしつつ内窓を追加する併用は、コストを抑えながら断熱・防音を強化できる方法です。さらに遮熱フィルムやブラインドと組み合わせることで夏の快適性も向上します。
- 築年数や住まいの性能に応じて工法を選択
- 部屋の用途別に窓を組み合わせると効果的
- 内窓＋外窓の併用で断熱・防音効果を強化
- 遮熱や採光も含めた総合的な判断が重要
- 生活スタイルに合わせた設置計画で満足度向上
まとめ
内窓と外窓には、それぞれ特徴と適した使い方があります。内窓は手軽に設置でき、防音や断熱効果を向上させるのに適しています。一方、外窓交換はサッシごと刷新するため、断熱・防音・防犯性能を根本的に改善できるメリットがあります。
選択の際は、住まいの築年数や窓の種類、設置環境、目的（寒さ対策・防音・結露防止など）を明確にし、工事費用や補助金も含めた総合的な判断が重要です。また、内窓と外窓の併用や遮熱フィルムとの組み合わせにより、コストを抑えながら快適性を高めることも可能です。
本記事で紹介した比較ポイントや失敗例を参考にすることで、自宅に最適な窓を選ぶ判断材料が整理できます。まずは住まいの現状を確認し、目的に合わせた窓リフォームを検討しましょう。
