住宅の図面を初めて手にしたとき、窓の記号がどこを指しているのか迷った経験はないでしょうか。引き違い窓は日本の住宅で最もよく使われる窓ですが、図面上での書き方にはいくつかのルールがあります。平面図と立面図では表現の仕方が異なり、縮尺によっても描き方の粒度が変わります。
この記事では、引き違い窓が図面でどう表されるか、掃き出し窓と腰窓ではどこが違うのか、シャッター付きの場合は何が加わるのか、そして寸法記号はどう読むのかを順番に整理していきます。図面を読む機会がある一般の住まい手の方にも分かるように、基本から解説しています。
住宅のリフォームや内窓の導入を検討する際、既存の図面を確認できると打ち合わせがスムーズになります。窓の記号と寸法の読み方を知っておくと、実際の選択や判断の場面で役立つはずです。
引き違い窓の図面記号が表す情報
図面に描かれた窓の記号は、見た目の形だけでなく、窓の種類・動き方・寸法・ガラスの種類まで一度に伝えるための表現です。引き違い窓の記号に何が込められているかを知ると、図面全体が読みやすくなります。
平面図での基本的な書き方
平面図は建物を水平に切って上から見た図です。腰の高さ付近でカットするため、壁の断面と開口部が真上から見えた状態で表現されます。
引き違い窓の平面図記号は、壁の開口部に細い線が2本(または複数本)重なるように描かれます。この重なりが、2枚の障子(ガラス戸)が左右に引き違っている状態を示しています。掃き出し窓の場合は開口が床まで届くため、壁の線がそのまま途切れる形になります。腰窓の場合は、開口の下に腰壁があることを示す線が入ります。
実際の住宅の平面図では、1/100スケールの簡略表記と、1/50スケールの詳細表記の2種類があります。1/100では窓の位置と大きさを把握するための略式で、線の本数が少ない場合もあります。1/50ではガラス面・框(かまち)・レール部分がより細かく表現されます。どちらが正確ということではなく、図面の用途に応じて使い分けられています。
線が2本の場合は2枚建て、4本なら4枚建てです。
開口の下に横線があれば腰窓、なければ掃き出し窓と読み取れます。
立面図での書き方とその役割
立面図は建物の外壁面を正面から見た図です。窓の見た目の形がそのまま表現されるため、引き違い窓は長方形の枠の中に縦の分割線が引かれた絵として描かれます。
外観から見た引き違い窓は、左右2枚の障子が重なって見えるため、立面図には枠の中央付近に縦の区切り線が入ります。掃き出し窓であれば床面(FL:フロアライン)から窓が始まり、腰窓であれば床から少し上がった位置から枠が始まります。FLは図面の左端や下端にラインとして記載されていることが多く、窓の取付高さを確認するときに使う基準線です。
立面図は「外から見た姿」なので、障子が2枚重なっている部分(召合せ部分)を強調して表現することもあります。設計者や会社によって細かな描き方に差がありますが、基本的には枠と分割線の組み合わせで表現されます。
縮尺によって変わる表現の粒度
建築図面には縮尺があり、同じ引き違い窓でも縮尺が変わると表現の詳しさが変わります。1/100の平面図では、窓の位置と大きさを素早く把握できる略式表記が使われることが多く、線の数や細部が省略されることがあります。
1/50の平面詳細図では、框(かまち)の幅・レールの位置・ガラス面の位置まで表現され、実際の取り付け寸法の検討に使えるレベルで描かれます。どちらの縮尺の図面を見ているかによって、読み取れる情報量が変わります。
図面を読む際は、図面のタイトルや縮尺の記載(例:S=1/100)を先に確認するとよいでしょう。略式の平面図で窓の位置を把握し、詳細図で寸法や形状を確認するという使い分けができます。
| 縮尺 | 主な用途 | 引き違い窓の表現 |
|---|---|---|
| 1/100 | 間取り図・配置確認 | 略式(線2本程度) |
| 1/50 | 平面詳細図 | 框・レールまで表現 |
| 1/20以下 | 断面詳細・納まり図 | 枠の断面形状まで表現 |
- 平面図は水平断面で、開口部の位置と引き違いの状態を上から見た形で表現する
- 立面図は外観図で、窓の形状・取付高さを正面から見た形で表現する
- 縮尺が小さいほど表現は略式になり、位置確認に適している
- 縮尺が大きいほど詳細が表現され、寸法確認や発注に適している
掃き出し窓と腰窓の図面上の見分け方
引き違い窓には、床まで届く掃き出し窓と、床から壁が立ち上がった腰窓の2種類があります。外見上は似た記号に見えることもありますが、平面図と立面図でそれぞれ区別する方法があります。
掃き出し窓(テラスタイプ)の平面図
掃き出し窓は、お庭やバルコニーへの出入り口にも使われる背の高い引き違い窓です。床から天井付近まで窓が続くため、窓の下に壁(腰壁)がありません。
平面図では、壁の開口部に引き違いの線が入り、開口の下端が床面と一致している状態で表現されます。腰壁がないため、開口部の下に横線(腰壁を示す線)が入りません。一見すると単純な開口に見えますが、この「下の横線がない」ことが掃き出し窓の目印のひとつです。
引き違い窓のサイズ呼称では、内法高さが1800mm以上のものが掃き出し窓(テラスタイプ)として区分されることが多く、寸法表記が「16518」「18020」などのように高さの呼称が18以上になります。サッシメーカーの窓ハンドブック等の資料によれば、掃き出し窓タイプでは下枠の納まりが床と取り合う形状になるため、通常の腰窓と寸法の押さえ方が変わる点にも注意が必要です。
腰窓タイプの平面図
腰窓は、腰の高さ(床から700〜900mm程度)から始まる引き違い窓です。台所・寝室・洋室など、さまざまな場所で使われます。
平面図での腰窓の表現は、掃き出し窓との違いが「開口の下の横線の有無」に現れます。腰窓では窓の下に腰壁があるため、平面図の開口部の下端に横線が引かれます。ただし、設計者によってこの線を省略することもあるため、「必ずある」とは言い切れません。
立面図では、床面(FL)から少し上がった位置から窓枠が始まる描き方になります。床から枠の下端までの距離が「腰高(腰FL)」として記載されることがあります。リフォームや窓交換の際に、現在の窓の腰高を確認するときは、この立面図の寸法を参照するとよいでしょう。
平面図:腰壁を示す横線がある→腰窓、ない→掃き出し窓(ただし省略されることもある)
立面図:FLから窓が始まっている→掃き出し窓、FLから上がった位置から始まっている→腰窓
寸法表記:高さ呼称が18以上→掃き出し窓タイプの目安
地窓・高窓の場合の扱い
引き違い窓には、床面に近い位置に設ける「地窓」や、天井近くに設ける「高窓」として使われるケースもあります。これらは腰窓と同じく腰壁(または上部の壁)を持つため、平面図上の表現は腰窓と基本的に同じです。
ただし、地窓のように床面ほぼぴったりに取り付く場合は、腰壁がないため掃き出し窓と同様の表現になることがあります。高窓は平面図の切断位置(腰高程度)より上にあるため、通常の平面図では直接表現されず、「破線(不可視線)」や注記で補足されることもあります。
図面を読む際は、「腰窓の書き方に近い表現であっても、寸法や取付高さの記載で実際の位置を確認する」という姿勢が大切です。特に高窓については、立面図と断面図を合わせて確認すると誤解が生じにくくなります。
- 掃き出し窓は開口の下に横線なし、FL直上から窓が始まる
- 腰窓は腰壁を示す横線が入ることが多い
- 地窓・高窓は腰窓の表現に準じるが、取付高さの確認が必要
- 縮尺によって省略される情報があるため、複数の図面を照合するとよい
シャッター付き引き違い窓の図面表記

住宅の1階によく設置されるシャッター付きの引き違い窓は、図面上ではシャッター無しの引き違い窓に数本の線やボックスが加わった形で表現されます。どこにどんな線が追加されるかを知っておくと、図面を読むときに混乱しにくくなります。
立面図でのシャッターの描き方
シャッター付きの引き違い窓を立面図で見ると、通常の引き違い窓の枠の上部にシャッターボックスが描かれます。シャッターボックスは収納箱なので、窓枠の上に横長の長方形として表現されます。また、ボックスの両脇にはシャッターを収納するレールが縦に描かれます。
シャッターが閉まった状態で描く場合と、開いた状態で描く場合があります。開いた状態ではボックスとレールだけが描かれ、閉まった状態では窓面にシャッターの横線(スラット部分)が表現されます。半開状態で描く設計者もいます。どの状態で描くかは設計者や会社のルールによりますが、「シャッターボックスが上部にある」という点はどの描き方でも共通です。
平面図でのシャッターボックスの表現
平面図では、シャッターボックスの位置が壁の外側(屋外側)に飛び出した形で描かれます。平面図は腰の高さでカットした断面図のため、シャッターボックスは腰の高さより上にあり、通常の平面図では見えない部分になります。このため、シャッターボックスは「破線(かくれ線)」または「点線」で表現されるのが一般的です。
破線や点線で囲まれた長方形が壁の外側に付いていたら、それはシャッターボックスを表しています。シャッター本体の線(スラット)は一点鎖線や二点鎖線で表現されることもあります。これらの線の使い方は設計者によって異なりますが、「見えない(隠れている)部分を表す点線・破線」というルールを覚えておくと読みやすくなります。
線の種類と表記ルールの基本
建築図面で使われる線には、意味によって種類があります。引き違い窓やシャッターを読む上で知っておきたい主な線の種類を整理します。
| 線の種類 | 図面上の表現 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 実線 | 連続した線 | 見えている部分・外形線 |
| 破線 | 短い線が続く | 隠れて見えない部分 |
| 一点鎖線 | 長線と点が交互 | 中心線・通り芯など |
| 二点鎖線 | 長線と点2つが交互 | 想像線・仮想形状 |
シャッターボックスは腰より高い位置にあるため破線で表現されます。シャッター本体は「現状では取り付けられていないが取り付けられる形状」という意味で二点鎖線が使われることもあります。図面上の線の種類に注目すると、「見えている部分」と「隠れている部分」の区別がつきやすくなります。
- シャッター付き引き違い窓は、通常の引き違い窓にシャッターボックスとレールが加わる
- 立面図ではボックスが窓上部に長方形で描かれ、開閉状態は設計者によって異なる
- 平面図ではボックスは破線または点線で表現される
- 線の種類(実線・破線・鎖線)で「見える」「見えない」が区別できる
引き違い窓の寸法記号を読む
引き違い窓の図面には、窓の大きさや種類を表す数字・記号が記載されています。これらの表記を読めるようになると、実際の窓の大きさや設置位置がイメージしやすくなります。
5桁の数字が意味すること
住宅の図面でよく見かける引き違い窓の寸法表記は、「16520」「11909」のような5桁の数字で表されています。この数字は「内法基準寸法の呼称」と呼ばれ、前3桁が横幅(W)、後2桁が高さ(H)を表しています。
たとえば「16520」の場合、前3桁の「165」が内法基準幅を1mm単位で表し(1650mm相当)、後2桁の「20」が内法基準高さを10mm単位で表しています(2000mm相当)。つまり16520は、横幅約1650mm・高さ約2000mmの引き違い窓を意味します。後2桁は10mm単位の省略表記のため、実際の正確な内法寸法はメーカーの製品カタログで確認するとよいでしょう。この寸法表記は木造住宅用サッシに使われるルールで、RC造や鉄骨造の建物では異なる方式が使われることがあります。
高さの呼称が18以上(例:16518・18020など)は掃き出し窓(テラスタイプ)に分類されることが多く、床との取り合いが腰窓と異なります。住宅の図面を確認する際は、この5桁の数字で窓の大きさの目安を把握することができます。
「16520」→ 前3桁165=内法幅1650mm相当、後2桁20=内法高さ2000mm相当
「11909」→ 幅1190mm相当×高さ900mm相当の腰窓
実際の正確な寸法はメーカーカタログで確認してください。
建具符号(H、AWなど)との組み合わせ

図面には寸法の数字と合わせて、「建具符号(建具略号)」と呼ばれる記号が記載されることがあります。住宅用のアルミサッシでは「AW(アルミ製窓)」、樹脂窓では「PW(樹脂製窓)」のようなアルファベット2文字が使われます。
窓の種類を示すアルファベットとして「H」が使われる場合があります。「H」は引き違い窓(Horizontal sliding window)の頭文字に由来します。ただし、建具符号のルールは図面によって異なり、「AW-5」のような番号と組み合わせて使われる場合もあります。間取り図でこれらの記号が分からないときは、図面に「凡例」が記載されていることが多いので、そちらを先に確認するとよいでしょう。
なお、mado-handbook.com(窓ハンドブック)が紹介している建具種別記号一覧は、国土交通省の建築工事設計図書作成基準を参考にまとめられています。図面の記号が凡例で分からないときは、このような建具記号一覧のページを参照することもひとつの方法です。
ガラス種別や取付高さの読み取り方
窓の記号の近くには、寸法の数字以外にもガラスの種類や取付高さを示す情報が記載されることがあります。たとえば「型ガラス」「FL+900」のような表記がそれにあたります。
「FL+900」はフロアライン(床面)から900mm上の位置に窓の下端がある、という意味です。腰窓の取付高さとして標準的なのは床から700〜900mm程度とされており、この記載で実際の設置高さを把握できます。ガラスの種類としては、FL(フロートガラス)・F(型板ガラス)・PG(複層ガラス)・Low-E(Low-Eガラス)などの略号が使われます。どのガラスが使われているかで、断熱性・遮音性・プライバシーへの影響が変わるため、リフォームや交換を検討するときに確認しておくと役立ちます。
- 5桁の数字は前3桁が幅・後2桁が高さの目安(木造住宅用サッシの呼称)
- AW・PWなどの建具符号は材質、H・Fなどは窓種類のアルファベット
- FL+〇〇は床からの取付高さを示す
- ガラス種類の略号で断熱性・採光・プライバシーの仕様が分かる
間取り図で窓記号を読み間違えやすいポイント
引き違い窓の図面記号はシンプルな形をしているぶん、他の窓や戸の記号と混同しやすい部分があります。特にリフォームや内窓設置の検討時に間取り図を参照する場合、確認しておきたいポイントをまとめます。
引き違い窓と引き違い戸の見分け方
引き違い窓と引き違い戸(引き戸)は、図面上の記号が非常によく似ています。どちらも左右にスライドする建具のため、基本的な記号の形が共通しています。
主な見分け方のひとつは「設置場所」です。壁の外側(屋外側)に開口があれば窓、室内の壁に設置されていれば引き戸として読むのが基本です。また、立面図や建具表に記載された建具符号(AW・AWなら窓、WDなら木製ドアなど)で区別できます。
掃き出し窓は出入りができる大きさのため、「引き違い戸」と呼ばれることもあります。掃き出し窓として図面に描かれていても、引き違い戸と記載する設計者がいるため、寸法と設置場所を合わせて確認するとよいでしょう。
片引き窓・上げ下げ窓と混同しやすい場合
片引き窓は、一方がFIX窓(はめ殺し窓)で固定されており、もう一方だけがスライドする窓です。引き違い窓と似た見た目ですが、平面図では動く側と固定側の表現が異なります。片引き窓の記号には、どちら側が動くかを示す矢印が入ることがあります。
上げ下げ窓は左右ではなく上下にスライドする窓です。立面図では引き違い窓に似た長方形に見えることがありますが、矢印の向きが横(引き違い)か縦(上げ下げ)かで区別できます。建具表や凡例が添付されている図面では、窓の種類ごとに記号が整理されているため、初めて見る記号はまず凡例を確認する習慣をつけるとよいでしょう。
なお、三枚建ての引き違い窓(3本のレールに3枚の障子)や四枚建て(2本のレールに4枚)など枚数の多いタイプも存在し、立面図では縦の区切り線の本数が増えて表現されます。
図面ごとに書き方が異なる理由
建築図面の記号には「絶対的な統一ルール」が存在しません。国土交通省の建築工事設計図書作成基準に代表的な記号の例は示されていますが、設計事務所や施工会社によって独自のルールや慣習があります。
このため、同じ引き違い窓でも図面を描いた会社が変わると、線の数・シャッターの表現・記号の位置などに違いが生じることがあります。図面を読む際に「いつもと違う」と感じたときは、まずその図面の凡例ページを確認してください。凡例には、その図面で使われている記号の一覧と意味が記載されています。凡例がなければ、図面を作成した設計者や施工会社に問い合わせるのが確実です。
| 混同しやすい窓 | 見分けるポイント |
|---|---|
| 引き違い戸 | 室内か屋外側の開口か、建具符号で確認 |
| 片引き窓 | 固定(FIX)側の有無、矢印の方向 |
| 上げ下げ窓 | 矢印が縦向き、立面図の形状 |
| 三枚・四枚建て | 立面図の縦線の本数 |
- 引き違い窓と引き違い戸は設置場所と建具符号で区別する
- 片引き窓はFIX側の有無や矢印表記で引き違い窓と区別できる
- 上げ下げ窓は矢印が縦向きのため混同しにくい
- 図面ごとに描き方が異なるため、凡例の確認が最初のステップ
まとめ
引き違い窓の図面での書き方は、平面図・立面図・縮尺・窓の種類によって変わりますが、基本的なルールを押さえれば読み取れるようになります。掃き出し窓か腰窓かは開口の下の横線の有無で区別でき、シャッター付きはボックスと破線が加わる表現で確認できます。
最初の一歩として、手元にある住宅の図面を取り出し、引き違い窓の記号を探してみてください。窓の周辺の線の種類と、寸法の5桁の数字を見るだけでも、窓の大きさと設置場所の目安が分かります。
窓の記号が読めるようになると、リフォームや内窓設置の打ち合わせで「現在の窓の種類とサイズ」を確認できるようになり、選択肢の比較がしやすくなります。気になることがあれば、図面を持参して設計者や施工業者に相談してみてください。

