木製建具の枠 名称があいまいだと、修理の相談や部材探しで話が噛み合わず、余計に遠回りになりがちです。
ただ、呼び名には地域差や職人さんの言い回しの違いがあり、あなたが間違っているとは限りません。大切なのは、枠まわりを部位ごとに分けて観察し、同じ言葉を同じ意味で使える状態にすることです。
最初は難しく感じても大丈夫です。目の前の建具を見ながら一つずつ当てはめて、今日から伝わる言い方に整えていきましょう。
木製建具の枠の名称を整理して迷いを減らす
ここでは木製建具の枠の名称を、まず土台になる部位から整理します。言葉の輪郭がはっきりすると、採寸や補修の判断が一気に楽になります。
枠と敷居と鴨居の違いを押さえる
枠は建具を受ける囲い全体を指すことが多い一方で、敷居は床側の横材、鴨居は上側の横材として分けて呼びます。混乱が起きるのは、枠という言葉が全体と部品の両方に使われるからです。
会話では、敷居と鴨居を先に確定するとズレが減ります。床側の段差や溝があるのが敷居、上側で戸がぶら下がるなら鴨居、という見方が手がかりになります。
縦枠と上枠の呼び方が分かれる理由
左右の縦材は縦枠、縦枠が戸の当たりを兼ねる場合は戸当たり付き縦枠のように説明されることがあります。上の横材は上枠と呼ぶこともありますが、引き戸では鴨居と言ったほうが通じやすい場面もあります。
呼び方が分かれるのは、建具の形式で役割が変わるからです。同じ木材でも、開き戸なら当たり面、引き戸なら溝の有無が重要になり、結果として言葉の選び方が変わってきます。
見切りと額縁とケーシングの役割
見切りは壁と枠の取り合いをきれいに納める細い部材で、隙間を隠す役目が中心です。額縁は枠の周りを飾る幅広の化粧材で、仕上げの印象を整えます。ケーシングは額縁を指す言い方として使われることがあります。
ここが混ざるのは、どれも仕上げ面に見える部材だからです。補修では、構造の枠を直すのか、化粧材を交換するのかで作業が変わるため、役割で切り分けると判断しやすくなります。
方立と無目が出てくる場面
方立は開口部の途中に入る縦の分割材で、両側の建具を受けたり、ガラス面の区切りになったりします。無目は横の分割材で、欄間の下などに入ることが多い部材です。どちらも枠の中を区切る要素として登場します。
この二つが重要なのは、建具を交換するときに寸法基準が増えるからです。全体の枠だけ見ていると見落としやすいので、途中に縦横の桟があるかを先に確認すると迷いにくくなります。
| 名称 | 位置 | 主な役割 | 見分けのコツ |
|---|---|---|---|
| 敷居 | 下 | 走行・ガイド | 溝や段差がある |
| 鴨居 | 上 | ガイド・吊り | 溝やレールがある |
| 縦枠 | 左右 | 受け・当たり | 戸が当たる面がある |
| 見切り | 枠の周り | 隙間隠し | 細く薄い化粧材 |
| 方立 | 中間縦 | 分割・受け | 途中で縦に区切る |
具体例として、建具の写真を撮るときは、敷居の溝が見える角度と、縦枠の当たり面が見える角度の2枚を用意します。撮った写真にスマホのマークアップで上、下、左右、中間を矢印で示し、敷居、鴨居、縦枠、方立らしき部材と書き添えると、相談先に伝わりやすくなります。
- 枠は全体名と部品名の両方に使われるので、敷居と鴨居を先に確定する
- 縦枠は当たり面の有無で説明すると通じやすい
- 見切りや額縁は化粧材として枠本体と分けて考える
- 方立と無目は途中の区切りとして先に存在確認する
開き戸と引き戸で枠まわりの呼び名が変わる
ここまで基本の部位を押さえたら、次は建具の形式で言葉が揺れるポイントを見ます。同じ家でも部屋ごとに開き戸と引き戸が混在しやすいので、ここで整理しておくと混乱が減ります。
引き戸は敷居と鴨居が基準になる
引き戸は戸が左右に動くため、敷居と鴨居の溝やレールが基準になります。特に木製の引き戸は、敷居の溝幅や深さで動きやすさが変わり、摩耗が出やすいのが理由です。
そのため相談では、敷居の溝が削れているのか、戸の下に戸車が付いているのかをセットで伝えると話が早く進みます。上吊りの場合は鴨居側の金物が基準になるので、上側の写真も必須になります。
開き戸は戸当たりと丁番側が要点になる
開き戸は回転して閉まるので、枠の中でも戸当たりの位置が重要です。戸当たりは戸が当たって止まる細い面で、気密や音漏れにも関係します。ここを枠とだけ呼ぶと、どの面を指すかがぶれやすくなります。
また丁番側の縦枠は、ビスの効きやすさや割れの有無が調整に直結します。戸がこすれる場所が丁番側か、戸先側かで原因が変わるので、開閉方向も一緒に伝えると誤解が減ります。
ドア枠は三方枠と四方枠で見方が変わる
開き戸の枠は、左右と上だけで構成する三方枠と、下も含めた四方枠があります。三方枠では床側に敷居がなく、見切りや床材との取り合いが重要になります。四方枠では下枠が段差になり、気密や水の侵入対策に関わることがあります。
呼び名が変わるのは、下側を部材として持つかどうかで話題が分岐するからです。見積もりや補修相談では、下に木の横材があるか、金属の見切りだけかをまず伝えると意図が伝わりやすいです。
建具と枠のすき間は調整しろで読む
建具と枠のすき間は、施工上の逃げとして確保されることがあり、調整しろとして扱われます。すき間があるのに不具合ではない場合があるのは、湿気で木が膨らんだり、季節で動いたりするからです。
一方で、すき間が片側だけ極端に広いなら建付けのズレの可能性が上がります。すき間を測るときは、戸の上、真ん中、下で差があるかを見ると原因の方向性が読みやすくなります。
開き戸は戸当たり面と丁番側が要点
三方枠か四方枠かで下側の呼び方が変わる
ミニQ&A:Q. 引き戸なのに上枠と言われました。間違いですか。A. 間違いとは限りません。鴨居を上枠と呼ぶ人もいるので、上側の溝や金物を写真で示して同じ部位を指しているか確認すると安心です。
ミニQ&A:Q. 戸当たりが分かりません。A. 戸をゆっくり閉めて、最後に戸が触れて止まる面を探します。そこが当たり面です。位置が分かれば、ゴムやフェルトの有無も一緒に伝えやすくなります。
- 形式で重要部位が変わるので、引き戸か開き戸かを最初に言う
- 引き戸は溝やレール、開き戸は戸当たり面と丁番側を押さえる
- 三方枠と四方枠で下側の扱いが変わる
- すき間は不具合とは限らず、偏りがあるかで判断する
現物で迷わないための見分け方と測り方
呼び名を覚えても、現物のどこを見て判断するかが曖昧だとまた迷います。そこで、観察の順序と寸法の取り方を決めて、誰でも同じ結論に近づける方法をまとめます。
見える面と下地の面を分けて観察する
木製建具まわりは、見えている化粧材と、その奥の下地材が重なっていることがあります。見切りや額縁だけを見て枠だと思うと、交換部材が合わないことが起きるのはこのためです。
まずは、壁から出ている一番外側が化粧材なのか、構造の枠なのかを見分けます。釘頭の位置や、継ぎ目の有無、塗装の違いが手がかりになります。写真で段差が分かる角度を残すと後で整理しやすいです。
枠の見付と見込みで寸法の意味が変わる
見付は正面から見える幅、見込みは壁の厚み方向の奥行きです。枠材の寸法を伝えるときにこの二つが混ざると、同じ数字でもまったく別の部材になってしまいます。混乱が出るのは、日常会話で幅と奥行きを区別しないからです。
測るときは、正面の幅を見付、横からの厚みを見込みとしてメモします。さらに、枠の内側の有効寸法と、外側の全体寸法は分けて書くと、相手が読み違えにくくなります。
段差と溝は気密とガイドのためにある
敷居の段差や溝は、戸の走行をガイドしたり、すき間風を減らしたりする目的で設けられます。引き戸がガタつくときに溝の摩耗が疑われるのは、戸の位置決めが溝に依存していることが多いからです。
ただし、溝があっても戸車で浮いて走るタイプもあり、摩耗部位が敷居だけとは限りません。溝の底に削れ粉があるか、戸の下に金物が見えるかを合わせて見ると、原因の切り分けがしやすくなります。
交換部材は断面形状が一致するかで決まる
見切りや額縁、戸当たり材などの交換は、長さだけではなく断面形状が合うかが決め手になります。似た幅でも段差の位置が違うと、壁に浮いたり、建具が当たったりすることが起きるのが理由です。
そのため、部材の端を定規と一緒に撮影し、厚みと段差の位置が分かるようにします。可能なら紙に断面を簡単に写し取り、寸法を添えると、ホームセンターでも比較しやすくなります。
| 観察ポイント | 見る場所 | メモする内容 | なぜ効くか |
|---|---|---|---|
| 化粧材か枠本体か | 壁との段差 | 段差の層と継ぎ目 | 交換対象を誤りにくい |
| 見付 | 正面 | 見える幅 | 部材の太さが伝わる |
| 見込み | 側面 | 奥行き | 壁厚との関係が分かる |
| 溝形状 | 敷居・鴨居 | 溝幅・深さ | 走行やガイドの基準になる |
| 断面 | 部材端部 | 段差位置と厚み | 互換性の判断材料になる |
具体例として、メモ用紙に上、下、左右を書いてから、見付、見込み、溝幅、溝深さを順番に記入します。次に、部材端の写真を定規付きで撮り、写真番号をメモに書き添えます。このセットを作るだけで、店頭での比較や業者への相談がぐっと楽になります。
- 化粧材と枠本体を分けて観察し、交換対象のズレを防ぐ
- 見付と見込みを分けて測り、同じ数字の取り違えを減らす
- 溝や段差は役割があるので、摩耗の有無も合わせて見る
- 交換は断面形状が要で、端部の写真とスケッチが役立つ
補修と交換の判断材料として枠名称を使う
観察と採寸ができたら、次は不具合の切り分けに名称を使います。どの部位が基準になっているかが分かると、DIYで触ってよい範囲と、相談すべき範囲も見えやすくなります。
建付け不良は枠のどこが基準かで切り分ける
戸がこすれる、閉まりにくいといった建付け不良は、枠の基準面がどこかで原因が変わります。開き戸なら丁番側の縦枠と戸当たり面、引き戸なら敷居の溝と鴨居のガイドが基準になりやすいです。
原因の見当がつくのは、接触している場所が基準面のズレを示しているからです。こすれ跡が上だけなら垂れ、戸先だけなら反りの可能性など、痕跡の位置が手がかりになります。まず痕跡を探すと迷いにくいです。
敷居の摩耗は戸車とセットで考える
敷居が削れて段差になると、引き戸が重くなったり、引っかかったりします。ただし敷居だけが原因ではなく、戸車の摩耗や高さ調整のズレが一緒に起きることも多いです。片方だけ直しても改善しにくいのはこのためです。
点検では、戸を外せる範囲で戸車の回りを確認し、敷居の溝に偏った削れがないかを見ます。外し方が不明な場合は無理をせず、メーカー窓口や建具店に形式確認をするほうが安全です。
枠の割れはビス位置と木口が原因になりやすい
縦枠や戸当たり付近の割れは、ビスを効かせた位置が端に寄っていたり、木口に力が集中したりすることで起きやすくなります。木は繊維方向に割れやすい性質があるため、負荷が一点に集まると進行しやすいのが理由です。
軽微な割れなら木工用ボンドや補修材で止められることもありますが、丁番周りの割れは荷重がかかるので慎重に判断します。ぐらつきがある場合は、補修より金物位置の見直しや下地補強が必要になることがあります。
隙間風は戸当たりとパッキンで見直す
冬の隙間風や音漏れは、枠そのものより戸当たり面の当たり方や、気密材の有無が原因になることがあります。戸当たりが痩せたり、建具が反ったりすると、閉めても密着しない状態が起きるからです。
対策は、どこから風が入るかを紙一枚で確かめると進めやすいです。紙を挟んで引き抜ける場所があれば、そこが弱点です。気密材を追加する場合は、建具の動きに干渉しない厚みにすることが大切です。
敷居の摩耗は戸車の状態とセットで見る
丁番周りの割れは荷重があるので慎重に判断する
具体例として、こすれがある場合は、鉛筆でこすれ跡の周囲を薄く塗ってから数回開閉します。塗った部分が削れた場所が接触点です。その位置を上、中、下のどこかに分類し、丁番側か戸先側かもメモすると、調整や相談の方向性が見えやすくなります。
- 建付けは基準面を決め、痕跡の位置から原因を推測する
- 敷居の不具合は戸車と同時に点検し、片手落ちを防ぐ
- 割れは発生位置で危険度が変わり、丁番周りは慎重に扱う
- 隙間風は戸当たりと気密材の当たり方で改善の余地がある
業者相談や見積もりで伝わる言い方に整える
ここまでで名称と見分け方がつながったら、最後は相手に伝わる形に整えます。呼び名の揺れを前提にしつつ、誤解が起きにくい情報の出し方に寄せるのがコツです。
写真と名称と寸法の三点セットが強い
口頭だけだと、同じ枠という言葉でも想像する部位がずれてしまいます。そこで、写真、名称、寸法をセットにすると誤解が減ります。写真があると位置が確定し、名称があると会話が短くなり、寸法があると部材候補が絞れるからです。
写真は全景と接写の2種類が基本です。全景で建具形式が分かるように撮り、接写で溝や当たり面が分かるようにします。寸法は見付、見込み、溝幅のように項目名も添えると伝わりやすいです。
呼び名の揺れは別名を併記して吸収する
例えば上側の部材は、鴨居、上枠、上枠材のように呼ばれることがあります。揺れがあるのは業界や地域で習慣が違うためで、誰かが間違っているとは言い切れません。
そのため、最初の連絡では別名を併記すると通じやすいです。上の溝がある部材、鴨居、上枠のように、位置説明と名称を並べます。相手がどの言葉を使っても、同じ部位に収束させやすくなります。
メーカー部材は型番より断面スケッチが効く
メーカーや建具店の部材は型番で管理されることがありますが、古い家では情報が残っていないこともあります。型番が分からないと詰むように感じますが、断面形状が一致すれば近い部材を探せる場合があります。
その理由は、現物合わせが必要な部材ほど断面が決め手になるからです。端部写真に加えて、紙に断面を写し取り、段差位置と厚みを書き込むと比較が進みます。無理に削って合わせるのは不具合を呼びやすいので避けるのが無難です。
依頼時は症状と場所と優先順位を言語化する
相談でずれやすいのは、何を直したいかが人によって違うからです。動きの重さを最優先にしたいのか、隙間風を止めたいのか、見た目を整えたいのかで提案が変わります。優先順位を言うと、提案の的が絞れます。
書き方は、症状、場所、いつから、困り度の順が分かりやすいです。例えば引き戸が重い、敷居の右側で引っかかる、冬から、まずは引っかかりを減らしたい、のように短文で並べると伝わりやすいです。
| 伝える項目 | 書き方の例 | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 建具形式 | 引き戸/開き戸 | 基準部位が変わる |
| 場所 | 敷居の右側/丁番側縦枠 | 同じ言葉のズレを減らす |
| 症状 | こすれる/隙間風/割れ | 対応の方向性が決まる |
| 寸法 | 見付、見込み、溝幅 | 部材候補が絞れる |
| 優先順位 | 動きを優先/気密を優先 | 提案のブレを抑える |
ミニQ&A:Q. 枠の名称が自信ありません。A. 自信がなくても大丈夫です。位置説明を添えれば伝わります。例えば床側の溝がある木材、敷居のように書くと、相手が用語を補ってくれます。
ミニQ&A:Q. 店頭で部材が見つかりません。A. 長さだけで探すと迷いやすいです。端部写真と簡単な断面スケッチを持ち、段差位置と厚みが近いものから当てていくと見つけやすくなります。
- 写真、名称、寸法をセットにして誤解を減らす
- 呼び名の揺れは別名併記と位置説明で吸収する
- 部材探しは断面形状が決め手になりやすい
- 依頼時は症状、場所、優先順位を短文で言語化する
まとめ
木製建具の枠名称は、敷居、鴨居、縦枠、見切りなどを位置と役割で整理すると、現物でも相談でも迷いにくくなります。
まずは手元の建具を見て、上、下、左右、中間の部位を写真に撮り、見付、見込み、溝幅の順で短くメモしてみてください。
呼び名に自信がなくても、位置説明と写真があれば十分伝わります。小さなメモ作りから始めると動きやすいです。

