「内窓 プラダン」での断熱対策は、低コストで室内の快適性を底上げできる現実的な選択肢です。本稿では、プラダン活用の前に知っておくべき素材の違い・効果の目安・安全配慮・具体的なDIY手順を、初心者でも再現しやすい形で整理しました。季節は夏でも、遮熱・断熱の両面で年中活かせる内容にしています。
用語を明確化しておきます。「プラダン」は一般にポリプロピレン(PP)製のプラスチック段ボールを指し、軽量で加工が容易です。一方「中空ポリカ」(商品名例:ツインカーボ)はポリカーボネート(PC)製の中空板で、剛性・耐候に優れます。以降はPP製=プラダン、PC製=中空ポリカとして区別します。
・費用目安:1窓あたり素材・部材込みで3,000〜8,000円(自作)/メーカー製内窓は5〜15万円
・効果の目安:室温2〜4℃の改善、電気代月1,500〜3,000円削減が期待(条件により変動)
・素材選び:加工しやすさ重視ならプラダン、耐久・見栄え重視なら中空ポリカ
・賃貸OK:原状回復できる固定方法を採用(突っ張り・両面テープ等)。避難・防火の制約は必ず確認
内窓にプラダンを使うと断熱性はどこまで上がる?
単板ガラス+アルミサッシの既存窓は熱が出入りしやすく、開口部対策は住まい全体の省エネ効率に直結します。プラダン(PP製中空構造)は軽量で扱いやすく、短時間のDIYで二重窓化を試せるのが最大の魅力です。メーカー製のような気密・質感までは届かないものの、費用対効果に優れます。
断熱効果の「目安」と前提条件
一般的な条件下では、プラダンを用いた二重化で熱の逃げは大きく抑えられ、室温は2〜4℃程度の改善が期待できます。電気代の削減も暖冷房方式・窓面積に依存しますが、月1,500〜3,000円程度の目安が報告されています。※詳細は注記参照
従来の内窓との違いとコスト比較
メーカー製(例:樹脂枠+Low-Eペア)の断熱・気密・見た目は非常に優秀ですが費用は高め。一方、プラダンDIYは1/10以下の費用で「まず効果を試す」アプローチに最適です。賃貸での原状回復のしやすさもメリットです。
開口部の熱損失は家全体のボトルネック
冬の暖房時・夏の冷房時ともに、窓からの熱移動は体感を大きく左右します。窓の二重化は壁断熱に手を付けにくい住戸でも実施しやすい「最初の一手」です。
期待できる光熱費の圧縮
暖房期は設定温度を下げても快適側に寄せられ、冷房期は西日面の遮熱でピーク時の負荷を抑えられます。結果として年間の光熱費を無理なく下げやすくなります。
プラダンと中空ポリカ(ツインカーボ)の比較
どちらも中空構造で断熱に寄与しますが、素材特性が異なります。目的(価格・見た目・耐久・加工性)で選びましょう。
素材別の性能・価格感
素材 | 厚みの目安 | 断熱の体感 | 価格感(1㎡) |
---|---|---|---|
プラダン(PP) | 4〜6mm | 良好(軽量・加工◎) | 1,500〜2,500円 |
中空ポリカ(PC) | 6〜10mm | 優秀(剛性・耐候◎) | 2,000〜3,500円 |
厚み別の選び方(用途ガイド)
厚み | 断熱性能 | 加工難易度 | 推奨用途 |
---|---|---|---|
4mm | 標準 | 易 | 小窓・初心者 |
6mm | 良好 | 中 | 一般住宅 |
10mm | 優秀 | 難 | 大型窓・高性能重視 |
室温変化と体感のレポート
無暖房の朝方や西日ピーク時に比較すると、窓際の不快感は明確に低下します。二重化により冷輻射・熱輻射が和らぎ、窓まわりの可動域も広がります。
結露・防音の副次効果
室内側表面温度が上がるため結露は減少傾向。さらに中空構造により生活騒音の伝播も緩和されます(感じ方には個人差)。
DIYで「内窓 プラダン」を作る手順

作業全体の所要は1窓で目安3〜4時間(慣れれば2時間台)。成功の鍵は「正確な採寸」「カット精度」「気密の確保」です。
材料と工具(最小構成)
プラダン(PP)または中空ポリカ(PC)/アルミ or 樹脂レール/ウェザーストリップ(薄手ゴム)/固定用ビスまたは原状回復可能な固定材(強粘着両面・突っ張り)/カッター(大)/金属定規/電動ドライバー/水平器/メジャー。
採寸と設計のコツ
上下左右・中央など複数点で内寸を測り、歪みがある場合は最小値を基準に。カット寸法は「実測−1〜3mm」を起点とし、試し板で挿抜テストして微調整。まずは下レールの水平を先に是正しておくと失敗が減ります。
カットと下処理
一度で切ろうとせず浅く数回スジ入れ→エッジで折り割き。切断後は細目ペーパーで面取りするとレールへの出し入れが滑らかになります。
レール固定と可動確認
上下レールは水平器で平行を厳守。ビス留めは下穴を先行し、仮固定→動作確認→本締めの順で。レール内側やシート縁にウェザーストリップを仕込むと気密が上がります。
大型窓・変形窓の対策
幅150cm超は「中桟追加」か「厚みアップ」を検討。出窓・台形窓など既製レールが合わない場合は木枠を新設し、その内側に板材を固定します。
中空ポリカ(ツインカーボ)内窓のメリデメ

PC製は剛性・耐候・質感で有利。費用が増すぶん、撓みが少なく見た目も整いやすい反面、加工難度は上がります。PP製は軽く安価で扱いやすく、まず試すには最適です。
メーカー製との性能差とコスパ
メーカー製は枠・気密・ガラス性能が高く、結露耐性や遮音も一段上。ただし価格差は大。プラダン/中空ポリカ内窓は「低コストで8割の体感改善」を目指す現実解です。
季節別の体感・光熱費と回収目安
効果は季節で現れ方が異なります。冬は冷輻射の軽減と立ち上がり短縮、夏は遮熱と温度ムラ抑制で効く場面が多いです。
冬の体感例
窓際の体感温度は改善し、暖房の立ち上がりも短縮。朝の不快な冷気だまりが緩和されます。
夏の遮熱とエアコン効率
西日面の熱侵入を抑え、ピーク時の上昇を鈍らせます。設定温度を1〜2℃緩めても快適を維持しやすく、電力消費の抑制に寄与します。
投資回収の目安
住宅タイプ | 年間削減額 | 投資回収 |
---|---|---|
築浅(高断熱) | 2〜3万円 | 2〜3年 |
築古(低断熱) | 4〜6万円 | 1〜1.5年 |
寒冷地 | 5〜8万円 | 0.8〜1.2年 |
失敗しないための実践ポイント
気密(隙間)対策を最優先に
断熱の伸びしろは気密に直結。シートの四辺とレール接触部、レールと枠の取り合いを重点的に詰めます。
採寸・加工の精度を上げる
直角定規・水平器も併用して歪みを把握。段階切りでエッジを整え、無理なはめ込みは避けます。
よくあるつまずきと対処
- サイズ過大:再カットでエッジが荒れる前に新規シートへ切替
- レール水平不良:仮固定で動作確認→本締めの順に
- 撓み:中桟追加または厚みアップで対処
メンテナンスで性能維持
月1回の軽清掃(レール溝の埃除去・表面拭き)、年1回を目安にゴムの状態点検。レールへ微量のシリコンスプレーで摺動性を確保します。
賃貸・法規・安全のチェックリスト
原状回復:ビス止め不可なら突っ張り・両面・既存ビス穴流用などで対応。撤去手順も事前に設計しておく。
まとめ
「内窓 プラダン」は、低コストで体感改善を狙える有力策です。まずは加工しやすいPP製で試し、満足度や設置精度を踏まえてPC製・メーカー製へ段階的にアップグレードするのが賢明。成功の決め手は採寸精度と気密対策にあります。
効果の目安は室温2〜4℃改善・電気代1,500〜3,000円/月の削減(条件次第)。賃貸でも原状回復手法を選べば導入しやすく、夏冬問わず快適性に寄与します。
※本稿の数値は「8畳相当・単板アルミサッシ・外気5〜35℃・室温20〜27℃・一般的な家電効率」を想定した参考目安です。実際の効果は住戸条件・窓面積・方位・施工精度・気象で変動します。